【イベントレポート】NEXCHAINオンラインセミナー『企業間連携の現在地』
2021年3月12日に開催したオンラインセミナー『企業間連携の現在地』では、NEXCHAINの取り組みの現在と今後の展望を、DXを推進する経団連様や参画企業様の視点からご紹介しました。ここでは、当日ご視聴できなかった方々のために、イベントで配信された4セッションのアーカイブ映像と講演内容のエッセンスをお届けします。
【イベントレポート】NEXCHAINオンラインセミナー
『企業間連携の現在地』
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価値協創で推進する「日本発DX」
経団連DXタスクフォース座長/損害保険ジャパン(株)
取締役専務執行役員
浦川伸一様 -
NEXCHAINのビジョンと実践
企業間情報連携推進コンソーシアム
(NEXCHAIN) 理事長
市川芳明 -
地域創生と企業間情報連携
manordaいわて(株) 代表取締役
菊地文彦様 -
「賃貸入居プロセスのワンストップ化サービス」に見る、新たな可能性
積水ハウス(株) 田原陽一様
KDDI(株) 中村俊一様
(株)日立製作所 今井昭宏様
NEXCHAIN 加藤晃三
「Society 5.0」時代に向け、企業が取り組むべき協創の“要件”とは?
価値協創で推進する「日本発DX」
経団連DXタスクフォース座長/損害保険ジャパン(株)
取締役専務執行役員
浦川伸一様
「Society 5 .0」を「デジタル革新(DX)と多様な人々の想像力、創造力の融合によって価値創造と課題解決を図り、自ら創造していく社会」と定義している経団連。「デジタル技術を用いた単純な改善や省人化、自動化、効率化、最適化にとどまらず、社会の根本的な変化に対し、ときに既成概念の破壊をともないながら新たな価値を創出するための改革。それが、我々の考えるDXです」。そう語るのは、経団連DXタスクフォースの座長を務める浦川伸一様です。
「Society 5 .0の実現に向け、欠かせないのが産業の大転換です」と浦川様は強調します。「従来の産業は業種・製品起点で区分されてきましたが、今後は体験価値や社会課題など、生活者の視点に基づいた産業構造への変革が求められるでしょう。そこで経団連が提唱するのが、日本発『価値協創DX』です。ここで言う協創とは、①独立した2以上の主体、②パートナー同士の対等な関係、③互いのリソースやリスクの活用、④DXの活用、⑤新たな生活者価値の創造の5要件を満たすものです」
経団連はDXの社会実装に向けた取り組みを「価値協創DX推進プロジェクト」として推進。NEXCHAI Nも名を連ねているこのプロジェクトに、浦川氏は大きな期待をかけています。
「異なる企業同士が一歩踏み込んで議論し、データの流通や共有が活発化することで、新たな生活者価値が生まれる。そして、大企業やスタートアップ企業など業種や規模が異なる多様な主体が協創に参画することで、新しい発想が生まれる。その中核にデジタル技術を据えることで、産業構造を変えるくらいの、これまでにない価値を生み出してほしい。そう願っています」
NEXCHAINという“触媒”を活かし、企業に「社会課題解決力」を。
NEXCHAINのビジョンと実践
一般社団法人企業間情報連携推進コンソーシアム
(NEXCHAIN) 理事長
市川芳明
「Society 5 .0」の社会実装をめざし、2020年4月に発足したばかりのNEXCHAIN。2021年3月現在、会員企業は33社にのぼります。「NEXCHAINは3つの価値を会員企業様に提供します。1つめは、業界の壁を越え、多種多様な企業様同士が情報交流を図れること。2つめは、企業様同士が対等な立場で議論し、新たなビジネスのユースケースづくりに取り組めること。そして3つめは、新たなビジネスの実証実験や商用化にあたり、NEXCHAI Nが用意するセキュアかつトレーサブルな情報基盤をお使いいただけることです」。そう語るのは、IECやISOなどの国際標準の形成に関わった経験を持つ、NEXCHAIN 理事長の市川芳明です。
Society 5 .0の実現に向け、企業に求められるのは市場形成力。いわば「競争しないで儲ける力」であり、さらに「社会課題解決力」と「ルール形成力」の2つに細分化されると市川は指摘します。「このうちNEXCHAINが着目するのが社会課題解決力です。この力を手に入れるには、業界の壁を越え、企業同士が連携する必要があり、容易なことではありません。しかし、NEXCHAINという場が触媒になることで、異業種間のイノベーションを誘発できるのではと考えています」
NEXCHAINではすでにいくつものユースケースについて検討が進められ、今年1月には新サービス「引っ越し手続きのワンストップ化」が商用化。「今後もさまざまな業界の企業様の参画が見込まれます」と、市川は意気込みを語ります。
「会員企業様が増えるほど、よりベネフィットを感じていただけるはずです。『異業種の力を借りてみたい』とお考えの企業様は、ぜひお気軽にお声がけください」
地域課題✕NEXCHAIN。情報連携で挑む、地方の人材流出問題。
地域創生と企業間情報連携
manordaいわて株式会社 代表取締役
菊地文彦様
2020年に岩手銀行様によって設立されたmanorda(マノルダ)いわて株式会社様は、地元岩手の課題を解決するためNEXCHAINの一員となった地域商社です。「地銀が持つ情報ネットワークやビジネスマッチング機能に企画・提案といった商社機能を加え、地域活性化プロジェクトをコーディネートする。そして、多種多様なステークホルダーとともに持続可能な循環型社会を実現するというビジョンを掲げています」。そう語るのは、manordaいわての代表取締役 菊地文彦様です。
「岩手では、地元の大学を卒業した人の7~8割が県外に流出しています。その一方で、自分が希望する仕事の場があれば県内に残りたいという学生も近年増えており、働く場の創生が急務となっています。解決策として弊社が着目したのが、テレワーク・サテライトの誘致です」。その実現をめざし、大都市圏の企業群へのアプローチ手法を探るなかで菊地様の目に留まったのがNEXCHAINでした。
現在、manordaいわて様とNEXCHAINが進めているのが、「地方銀行の保有不動産を活用したテレワーク拠点整備」。双方が持つ情報を連携しあうことで、オフィスの地方分散や地方創生への共創型参画を検討している企業と、テレワーク・サテライトを誘致したい岩手の市町村とのマッチングを行うモデル事業です。菊地様には、この事業にかける並々ならぬ思いがあります。
「まずは共創プラットフォームを岩手で確立し、ゆくゆくはこのモデルをほかの地域の課題解決に活用していただければと考えています。地域商社という枠組みを、異業種連携というさらに大きな*枠組みにビルドインすることで、地方と大都市圏の企業群との情報連携をいっそう促進できる。弊社はその嚆矢(こうし)として、チャレンジを続けてまいります」
KDDI、積水ハウス、日立製作所が挑む生活者価値の創成。
「賃貸入居プロセスのワンストップ化サービス」に見る、新たな可能性
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積水ハウス株式会社 経営企画部 新規事業戦略室
田原陽一様 -
KDDI株式会社 サービス統括本部 サービス技術部
中村俊一様 -
株式会社日立製作所 社会ビジネスユニット 公共システム事業部
今井昭宏様 -
ファシリテーター:
NEXCHAIN
加藤晃三
今年1月に提供が開始された、NEXCHAIN初の商用サービス「賃貸入居プロセスのワンストップ化サービス」。引っ越し時における賃貸、電気、ガス、水道といった煩雑な契約手続きを効率化するというものです。このサービスを推進する積水ハウス様、KDDI様、日立製作所様の実担当者を招き、パネルディスカッションを実施。NEXCHAIN参画の狙いやサービスの推進における役割、参画のメリット、今後の活動への期待などを語っていただきました。
「不動産業界のサービスレベル向上によるUXの向上をはじめ、業界課題の解決やお客さまとのタッチポイントの拡大などをめざし、参画しました」。そう語るのは、積水ハウスの田原陽一様。同社が保有する賃貸住宅の入居者情報を、本人の同意のもとインフラや通信、引っ越し事業者と連携することで、各種契約手続きの効率化の実現をめざしています。
電気、ガス、インターネットといった、引っ越し先で必要なインフラサービスを提供するのがKDDI様です。「通信事業者として培ってきたUXのノウハウを活かし、お客さまの利便性向上を追求していきたい。また、引っ越しや金融など異業種の参画企業が増え、かつ、各業界の同業種の企業も増えることで、ビジネス規模を拡大していけたらと考えています」と、同社の中村俊一様は意気込みを語ります。
積水ハウス様とKDDI様の2社で始まったこのサービスですが、将来的には行政手続きも含めたワンストップ化をめざしています。日立製作所様の今井昭宏様は、「地方自治体と情報連携することで、住民票の移動をはじめとするさまざまな行政手続きのワンストップ化をめざし、検討を進めています」と語ります。
後半では、商用化にあたっての苦労やサービス拡大への期待を3氏に語っていただいたほか、視聴者からの質問にもお答えいただきました。「今後NEXCHAINで協創してみたい業種は?」という質問に対しては、「介護福祉業界です。介護福祉関係の行政手続きは非常に煩雑。この連鎖をNEXCHAINのしくみで突破したい」(日立製作所 今井様)、「アパレル業界や食品業界と情報連携して、“衣食住”を網羅したい」(積水ハウス 田原様)、「ライフイベント業界と連携すれば、結婚や就職といったタイミングで適切なサービスを提供できる」(KDDI 中村様)と回答。各社が本音で情報連携への思いを語り合った45分間でした。